1. はじめに:自社株買いの現状と背景
日本企業の自社株買いが過去最高水準に達しています。
2023年度の実施額は10兆円を超え、2024年も同様のペースが続いています。
この背景には、東京証券取引所(JPX)の要請や企業の豊富な現預金、アクティビスト株主の圧力などがあります。
今回は、トヨタ自動車の最新の自社株買い拡大を例に、この流れについて考えてみたいと思います。
2. トヨタ自動車の自社株買い拡大の詳細
トヨタは2025年4月までの自社株取得枠を1兆円から1兆2000億円に拡大しました。
これは、金融機関向けの自社株TOBで予想以上の応募があったことに対応するものです。
今の日本株式市場の流れは、持ち合いをしている政策株(特に金融機関保有)を売却する流れになっています。
政策株のまとまった金額の市場での売却は株価の下げ要因になるばかりか、企業買収のサポートにもなりかねないので、どの企業もこの金融機関保有の政策株売却には頭を痛めています。
トヨタのように自己資金が豊富であれば、今回のように自社株買いという方法が取れるので、トヨタは自社株の防衛のために、このような自社株買いを進めていると言えるでしょう。
3. 日本企業の自社株買い増加の要因
自社株買いの増加の要因を整理すると以下の通りです。
- 資本効率改善への圧力:JPX(日本の証券取引所)の要請や投資家からの期待
- 金融機関をはじめとして機関投資家の政策株売却の流れ
- アクティビスト株主の影響力増大
4. 自社株買いの効果と評価
自社株買いは主に以下の効果をもたらします。
- 株価上昇への寄与
- ROE(自己資本利益率)の向上
- PBR(株価純資産倍率)の上昇
- 株主還元の拡大として好評価
5. まとめ
トヨタの事例に見られるように、日本企業の自社株買いは新たな段階に入っています
これは資本効率改善と株主還元の強化という点で評価できますが、この自社株買いは株主対策という一面が強いので、企業の本質的な業績改善には寄与せず、自社株買いの評価は一時的なものと捉えられるでしょう。
投資家は、単に自社株買いの規模だけでなく、企業の長期的な価値創造能力を総合的に評価することが重要と言えます。
個別企業の自社株買いに一喜一憂しないということです。
日本株全体の需給という面では、この自社株買いという巨大な買い手は日本の株式市場を下支えすることになるので、株式市場にとっては安心材料となります。
このような材料も頭に入れながら、前回の日本株が急落した時点のように狼狽売りはしないで、長期視点で投資をしていきましょう。