はじめに
上記の米ドル指数のチャートは、米ドルの主要通貨(ユーロ、円など)に対する価値を表してもので、高くなればドルの価値が強くなっているとみます。
トランプ大統領勝利後、更にドルが強くなっているのがわかります。
なぜ、ここまでドルが強くなっているのでしょうか。
追加関税でなぜドル高になるのか?
貿易赤字が減るとドルの価値が上がる
トランプ大統領が導入する追加関税は、アメリカに多くの商品を輸入している国に対するものです。
関税がかかると、輸入品が高くなり、アメリカ人は外国からの製品を買いにくくなります。
その結果、アメリカが外国から輸入するものが少なくなり、貿易赤字が縮小します。
貿易赤字が減ると、ドルに対する需要が高まりやすくなります。
外国からの買い物が減ると、ドルの供給も減り、ドルの価値が相対的に上がります。
また、この関税は議会を通さずとも、大統領権限で実行できます。
その実行のスピード含め、実現性のある政策であるため、市場が素早く反応しているのだと思います。
アメリカへの投資が増える可能性
関税によってアメリカ国内の企業が守られると期待されるため、企業が国内に戻ってくるかもしれません。
また、海外の投資家もアメリカの企業に資金を投じやすくなります。
こうした資本流入が起きれば、ドルに対する需要が増えてドル高につながります。
関税とドルの関係ってどういうこと?
輸入品の値上がりとインフレのリスク
追加関税がかかると、アメリカに輸入される製品の価格が上がります。
たとえば、海外で作られた家電や車が高くなり、アメリカ国内でも物価が上がる(インフレ)が起きやすくなります。
インフレが進むと、FRB(アメリカの中央銀行)は、金利を上げてインフレを抑えるための対策を取ることがあります。
金利が上がると、アメリカの通貨であるドルが魅力的になり、ドル高が進む可能性があります。
FRBの利上げとドルへの影響
FRBが金利を引き上げると、投資家はドルで運用することにメリットを感じやすくなります。
金利が高いほど、ドルを持っている人はより多くのリターンを得られるからです。
そのため、ドルが強くなり、他の通貨に対して価値が上昇します。
投資家が気をつけるべきポイント
アメリカの製造業や輸出企業への影響
関税政策が進むと、輸入品が高くなるだけでなく、他国もアメリカに対して関税をかけ返すことがあります。
これにより、アメリカの製造業や輸出企業が海外市場で競争力を失うリスクがあります。
こうしたセクターの企業の株式に投資する際は、注意が必要です。
新興国市場でのリスク
ドル高が進むと、新興国(発展途上国)に影響が出やすくなります。
新興国は多くの場合、ドルで借金をしているため、ドル高になるとその返済が難しくなり、経済が不安定になるリスクがあります。
ドル建て債務の多い国や新興国市場への投資には、特に注意が必要です。
ちなみに中国や韓国もドル建て債務の多い国です。
初心者向けの投資戦略
今は市場は先走って短期的に動いていますが、為替については、物価がどこまで上昇するのか、FRBのスタンスがどうなるか、トランプ大統領が金利上昇に耐えられるのかなど不透明な問題があるので、中長期的にもこの上昇傾向がどこまで続くかは正直わかりません。
ただ、これまでがグローバル化を推し進める中でのドル安政策が基本線でしたので、トランプ大統領になれば、このグローバル化にストップがかかり、180度異なる政策が取られることは間違いありません。
アメリカ第一主義で保護主義的な政策となれば、トランプ大統領の在任期間は、ドル高の傾向になるのではないかと思われます。
ドル高円安方向が続くのであれば、円預金、円建て債券など低利の円資産が多いポートフォリオを見直した方が良いのだと思います。
NISAも利用しながら、ドル建て資産を増やしていきましょう。