はじめに
厚生労働省は12月2日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通じて運用する資産の利回り目標を現在よりも0.2%引き上げる方針を明らかにしました。
これに市場が反応し、昨日は日経平均が前週末比304円99銭(0.80%)高の3万8513円02銭となりました。
なぜ、市場が反応して日経平均が上昇したのか。
以下に解説したいと思います。
GPIFとは何か?
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、日本の年金資金を運用する組織です。
管理する資産総額は240兆円を超え、世界最大級の年金基金です。
この巨額の資金を株式や債券などで運用し、年金財政を安定させる役割を担っています。
利回り目標引き上げの背景
厚生労働省は、GPIFの資産運用目標の利回りを1.7%から1.9%に引き上げる方針を示しました。
GPIFの運用はこれまで好調に推移してきており、01年度から23年度にかけ、累積収益額は約153兆円になりました。
この01〜23年度についてGPIFの運用利回りは年率で4.3%でした。
この間、国内の名目賃金の上昇率は0.1%弱だったことから、賃金上昇率を超す「実質的な運用利回り」は4.2%となりました。
これは実質的な運用利回りの目標である1.7%を大きく上回りました。
現在、GPIFの基本ポートフォリオでは国内株式、外国株式、国内債券、外国債券が各25%ずつとなっています。
このポートフォリオを前提にした場合、過去の実績からも運用成績が振るわなくても実質的な運用利回りは1.9%が妥当だと判断したことになります。
日本株式市場への期待と影響
今回の利回り引き上げ案は、日本株式市場にポジティブな影響を及ぼす可能性があります。
それは利回り目標を達成するため、日本株を含む株式の運用比率が高まる可能性を市場が読み取るからです。
現在、GPIFの基本ポートフォリオでは国内株式、外国株式、国内債券、外国債券が各25%ずつとなっていますが、通常このようなポートフォリオの利回りを高めるためには、国内株式、または外国株式の割合を増やす方向に動くからです。
まとめ
GPIFの運用資産額は240兆円と巨大であり、日本株はそのうち約61兆円を占めます。
例えば日本株式の比率が2%上昇しただけでも、約5兆円規模の安定した長期資金が日本株式市場を支えることになるのです。
市場に与える影響が大きいので、今回市場が反応したのもわかるでしょう。
実際はGPIFの基本ポートフォリオの国内株式25%を前提にした試算であり、その割合を変更するとは一言も発していないので、市場の勇み足ということだと思いますが、株は期待で動きますから、それが正しいか否かは今は問われていません。
私たち個人投資家があらためて認識したいのは、日本には巨大なお財布があり、それが日本株を下支えするから安心して長期で日本株に投資できるなということではないでしょうか。