自社株買いブーム:日本株式市場の新たな支援者

1. はじめに:2024年の自社株買いの状況

2024年、日本企業の自社株買いが過去最高のペースで進んでいます。

1月から8月までの累計で既に89,239億円に達し、2023年の年間実績86,786億円を超えています。

このペースが続けば、2024年の自社株買いは10兆円を優に超える規模になることが確実視されています。

自社株買いとは、企業が自社の株式を市場から買い戻すことです。

企業が自社株式の買い手となることで、株式の需給バランスを改善させます。

2. 自社株買い拡大の背景

自社株買いが拡大している背景には、以下のような要因があります:

  • 東京証券取引所(東証)による上場企業への要請:2023年3月、東証は上場企業に対し、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しました
  • 株主還元の強化:投資家からの要求に応える形で、配当と併せて株主還元を強化する動きが広がっています。
  • PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業の改善:多くの企業がPBR1倍割れの状況を改善するため、自社株買いを実施しています。
  • 持ち合い株式の解消:企業間の株式持ち合いを解消する動きに伴い、その受け皿として自社株買いを実施するケースも増えています。

3. 自社株買いが株式市場に与える影響

自社株買いは、以下のような形で株式市場にポジティブな影響を与えています:

  • 株価の下支え:大規模な自社株買いは、株式の需給バランスを改善し、株価の下支え要因となっています。
  • 資本効率の改善:自社株買いによる発行済み株式数の減少は、ROE(株主資本利益率)の改善につながり、企業価値の向上に寄与しています。
  •  市場へのポジティブシグナル:自社株買いの実施は、経営陣が自社の株価を割安と考えているというシグナルとなり、投資家の信頼を高める効果があります。

4. 投資家別売買動向と自社株買いの関係

2024年8月のような市場が大きく変動する局面では、自社株買いの重要性が特に際立ちます。

8月の投資家別売買動向を見ると、外国人投資家や個人投資家が売り越す中、事業法人(主に自社株買いを実施する企業)が11,543億円と過去最大の買い越しとなり、市場を下支えしました。

5. 今後の展望と投資への示唆

自社株買いの拡大傾向は今後も続くと予想されます。

日本企業の現金保有額は依然として高水準にあり、2023年度末時点で約128兆円に達しています。

また、自己資本比率も平均で45%程度まで上昇しており、多くの企業に自社株買いの余地があります。

投資家にとっては、以下の点に注目することが重要です:

  • 自社株買いを積極的に実施している企業や、今後実施する可能性が高い企業に注目する。
  •  PBR1倍割れの企業の中で、財務状況が良好で自社株買いの余力がある企業を探す。
  • 自社株買いと併せて、企業の成長戦略や財務健全性も総合的に判断する。

6. まとめ

日本企業による積極的な自社株買いは、株式市場を下支えする重要な要因となっています。

特に市場が不安定な局面では、自社株買いが市場の安定化に寄与する傾向があります。

日本の場合、現金保有額が高水準で、自社株買いの原資を多く保有しているので、自社株買いをしやすい環境にあると言えます。

海外投資家は日本株を売却しているようですが、自社株買いという新たな支援者がありますから、あまり振り回されない方が良いと思います。

自社株買い余力はまだまだあるので、日本株市場の新たな支援者として期待して良いでしょう。