EVバブル崩壊とトヨタの台頭

1. はじめに:EVの販売減速と市場の変化

電気自動車(EV)市場に異変が起きています。テスラ社の4-6月世界販売が前年同月比4.8%減、24年1〜3月期も同8.5%減と、ここにきて販売の減速傾向が鮮明になってきました。

さらに、他の自動車メーカーの中にもEVの生産を延期して、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を増産するところも出てきました。

この変化は、自動車業界全体に大きな影響を与えつつあります。

2. EVブームの背景と現実

これまで世界的な脱炭素の流れの中で、EVが注目され、主に先進国と中国で政府が補助金なども付けて、EVを強力に推進してきました。

しかし、結果的に消費者の判断は違ったようです。充電するインフラや充電にかかる時間の問題が指摘されてきましたが、特にこの冬欧米で寒波がきて、EVの弱点が露呈されたのが大きな転換点となりました。

3. EVの弱点:冬季の問題

冬場のEV使用には多くの課題があります。バッテリーを寒さから保護するためにヒーターを使用し、車内暖房にも電力を消費するため、バッテリーの消耗が激しくなります。

その結果、満タンにしても冬場は航続距離が100kmほど減少してしまいます。

これを想定しないと充電場所まで到達できず、大変な事態に陥る可能性があります。

実際に冬場に充電までの計算が狂い、EVが高速道路で大渋滞を起こした事例もあります。

4. 消費者の意識変化と市場の転換

このような体験から、消費者はEVにリスクを感じ、欧米中心にハイブリッドやガソリン車へのシフトが起こっています。

これを受け、特に欧州では政府の将来的なEV縛り(◯年後にEVに一本化するなど)を撤回し始めています。

世界の流れは変わり、これからはEV一本ではなく、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車も消費者が選択できるようになりました。

5. EVバブル崩壊の影響

EVバブルで最も恩恵を受けていたテスラ車の販売減少は、この市場変化を如実に表しています。

テスラ社の株価を見ると、2021年11月の高値407.36ドルから約42%下落しているのがわかります。

一方で、欧米自動車会社がEV一本化に動く中、全方位戦略(ガソリン、ハイブリッド、EV)をとっていたトヨタの販売台数は急増し、一人勝ちの状況になっています。

トヨタの株価は、2021年11月から約30%上昇しています。

6. 投資戦略への示唆:集中投資vs分散投資

EV特化(集中投資)のテスラと全方位戦略(分散投資)のトヨタの明暗が分かれました。

この集中投資と分散投資の比較は、個人の投資の参考にもなります。

市場環境の変化に柔軟に対応できる分散戦略の重要性が再認識されたと言えるでしょう。

7. 日本の自動車産業の復活

自動車産業は、部品も含めると雇用者も多く裾野が広い産業であり、各国経済全体に大きな影響を与えます。

トヨタを筆頭とする日本の自動車メーカーの好調は、日本経済全体にポジティブな影響をもたらしています。

さらに、日本のメーカーは次世代エンジンの開発にも注力しています。

例えば、マツダは独自の次世代ガソリンエンジン開発を進めており、日本の技術力を活かした新たな取り組みが始まっています。

www.watch.impress.co.jp

8. まとめ:日本の自動車産業の明るい未来

世界的なEVの流れで失速しかけた日本の自動車産業は、今や復活を遂げていると言えるでしょう。

多様な選択肢を提供し、技術革新を続ける日本のメーカーの戦略が、結果として市場の変化にうまく適応できたことが、この復活の鍵となりました。

日本の自動車産業の未来は明るくなってきたように感じます。

環境への配慮と消費者ニーズのバランスを取りながら、技術革新を続ける日本のメーカーの今後の展開に、世界中が注目しています。

投資の観点からは、トヨタをはじめとした日本株への投資比率を高めていくと良いのではないでしょうか。