新興国の「成長のわな」に注意

前回、新興国に投資するなら、債券より株式が良いとの話をしました。

今回は、新興国株式投資の注意点について話をします。

 

新興国株式、例えばインド株が今は人気です。

インドは、中国を超えて人口世界一になり、しかも若い労働力が多いので、今後何十年も高い経済成長が続くという話は良く聞きます。

 

ですが、経済の成長と株式投資のリターンは必ずしも一致しません。

米経済学者のジェレミー・シーゲルはこれを「成長のわな」と呼んで警告しています。

 

例えば、インドの高成長シナリオは、すでに世界中のプロ(機関投資家など)が知っていて、株価に織り込まれているはずです。

株価がさらに上がるためには、実際の成長が、この多くの人の予想をさらに上回ることが必要になります。

しかも株価を左右するのは国の成長ではなく企業の1株利益の成長です。

この企業への投資が巨額になればなるほど、企業の1株利益のリターンは小さくなってしまいます。

 

実際に、eMAXIS Slimシリーズで、先進国と新興国のリターンを比べてみましょう。

(この場合、円からの投資なので、為替のリターンも含めたパフォーマンスになります)

以下の通り、この3年、5年の投資でいえば、先進国の方がリターンが上回っています。

以下にはありませんが、新興国でもインド株だけであれば、3年25%、5年15%程度だったので、ほぼ先進国と同じ水準のリターンでした。

 

こうしてみてくると、新興国の成長への期待が、必ずしも新興国株式のリターンとして表れないことがわかると思います。

 

特に、今はインド株式は大人気で、かなりの資金がインド株に投資されているということは、すでにインドという国の成長期待以上に、インド株式に資金が流れているのかもしれません。

ということは、既に割高で、これまでのような投資リターンは期待できない可能性が高いのではないかとも考えられます。

この点を良く注意して、一つの有望な国の株式に資産の多くを集中させるのは、控えましょう。

株式投資は集中投資より分散投資が正解です。