今年のジャクソンホールは世界の金融政策の転換点

はじめに:世界経済の現状と中央銀行の方針転換

世界経済は新型コロナウイルス禍後のインフレの呪縛から徐々に抜け出しつつあります。

これを受けて、世界の主要中央銀行は政策金利の引き下げに向けた姿勢を示し始めています。

高金利時代が終わりを迎え、新たな経済フェーズに移行する兆しが見えてきました。

米連邦準備制度(FRB)の動向

パウエルFRB議長は、ワイオミング州ジャクソンホールで開催されたカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで、「政策を調整する時が来た」と発言しました。

これは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げをほぼ確約したものと解釈されています。

特筆すべきは、FRBの焦点がインフレから労働市場と経済成長の弱さへとシフトしていることです。

パウエル議長は、今後はインフレよりも労働市場からより多くのシグナルを得る見込みであることを示唆しました。

欧州中央銀行(ECB)の姿勢

ECBの複数の政策委員が9月の追加利下げを支持する意向を示しました。

フィンランド中銀のレーン総裁は、ユーロ圏におけるディスインフレの進行を「順調」と評価する一方で、製造業を中心とした成長の鈍化を懸念しています。

ECB内では、インフレ率が予測通りに推移する限り、9月を含め年内にさらに2回の利下げを行うというコンセンサスが形成されつつあります。

ECBは2025年下期にはインフレ率が2%目標まで低下すると予想しています。

イングランド銀行(BOE)の立場

BOEのベイリー総裁は、持続的なインフレのリスクは後退しているように見えると述べ、追加利下げにオープンな姿勢を示唆しました。

BOEは8月に、新型コロナウイルスのパンデミック初期以来となる利下げを実施し、政策金利を0.25ポイント引き下げて5%としました。

その他の主要国の中央銀行の動き

カナダ銀行、ニュージーランド準備銀行、中国人民銀行も金融緩和を実施しています。これらの動きは、世界的な経済減速への懸念と、インフレ圧力の緩和を反映しています。

日本銀行の例外的な立場

主要国の中で唯一の例外は日本です。

日本銀行は今年、17年ぶりに金融引き締めサイクルに着手しました。

これは、長年のデフレ傾向からの脱却と、円安の是正を目指す動きです。

今後の相場見通し

  • 金利低下傾向:主要国の利下げにより、全体的に金利が低下する可能性が高くなっています。これは債券市場にとってはプラス要因となり得ます。
  • 株式市場への一時的な好影響:低金利環境は企業の資金調達コストを下げるので、期待感から一時的に株式市場にとってプラス要因となりますが、リセッション(景気後退)入りのシグナルとも取れるため、注意が必要になります。
  • 為替市場の変動:各国の金融政策の違いにより、為替レートの変動が予想されます。特に、日本と他の主要国との金融政策の方向性の違いは、円相場に大きな影響を与える可能性があります。
  • 新興国市場への資金流入:先進国の金利低下により、より高いリターンを求めて新興国市場への資金流入が増加する可能性があります。
  • 金への資金注入:ドルの利下げによる価値の低下は金への資金流入を加速します。

まとめ

主要中央銀行の政策転換により投資家の不安は一部解消されましたが、金利引き下げのペースや今後の経済動向に不確実性が残っています。

今回の発表を受けて、短期的にリスクオン相場が復活し、株高になる可能性はありますが、この株高はあまり信用しない方が良いのではないかと思います。

今回の米国をはじめとした世界的な金融緩和への転換は、世界がリセッション(景気後退)入りしたことを示唆するので、景気が更に悪化した時や、インフレが再燃した時は経済がクラッシュする可能性があります。

この時は、株式投資などリスク資産は急落を起こすこともあるので、株式のみへの過大な投資には注意が必要になります。

また、日銀だけが、利上げをしており、他の世界の主要中央銀行と方向性が違うので、これまでより日本にお金が集まりやすくなります。

この政策の違いが継続する限りは、再度、1ドル160円のような過度な円安に進むことはないでしょう。