1. はじめに
人工知能(AI)市場の急拡大を見込んだ株高が失速しています。
注目のエヌビディアが米東部時間28日に公表した好決算はラリー再開の起点にならず、世界の半導体関連株の合計時価総額は直近ピーク時から1兆ドル(約144兆円)減りました。
特に、半導体大手のエヌビディアを中心としたAI投資の勢いは目覚ましいものがありますが、同時に市場は「過剰期待」の修正フェーズに入りつつあります。
今回は、最新の業績や市場動向を踏まえて、AI投資の現状と今後の展望について考察してみます。
2. エヌビディアの驚異的な成長
エヌビディアの成長は、まさに驚異的です。
2024年5~7月期の決算では、売上高が前年同期比2.2倍の300億4000万ドル(約4兆3500億円)、純利益が2.7倍の165億9900万ドルという驚異的な数字を記録しました。
さらに、8~10月期の売上高見通しも前年同期比で約8割増と、高成長の維持に自信を見せています。
3. AI投資の持続性
エヌビディアCEOのジェンスン・ファン氏は、「25年も素晴らしい年になる」と強気の姿勢を示しています。この自信の背景には、以下の要因があります:
- 巨大テック企業(Google、Meta等)による継続的な設備投資
- 次世代AI半導体「ブラックウェル」の登場
- 既存製品(H100、H200)への根強い需要
特に、データセンターへの投資は今後も拡大が予想されており、エヌビディアのAI半導体への需要は当面続く可能性が高いと言えます。
4. 市場の懸念と「過剰期待」の修正
一方で、市場はAI革命に対する過剰な期待を修正し始めています:
- エヌビディアの好決算発表後も株価が下落
- 世界の半導体関連株の時価総額が直近ピーク時から1兆ドル減少
- 投資家のAI関連株へのセンチメント変化
この背景には、巨額の設備投資に対する収益化の遅れや、投資の持続性への疑問があります。
5. 半導体業界全体への影響
AI投資の減速は、エヌビディアだけでなく半導体業界全体に影響を及ぼす可能性があります:
- 製造装置メーカー(東京エレクトロン、ディスコ等)の株価下落
- 韓国SKハイニックスや台湾TSMCなど、アジアの半導体メーカーへの影響
6. 今後の展望
今後のAI投資と関連株の動向を左右する要因として、以下が挙げられます:
- テック大手のAIインフラ投資の継続性
- AI技術の実用化と収益化のスピード
- 半導体企業の増益率の推移
- 世界経済全体におけるAI投資の位置づけ
7. まとめ
AI投資は依然として大きな潜在力を秘めていますが、短期的には「過剰期待」の修正局面に入っていると言えるでしょう。
これまで、AIの未来(特に半導体銘柄)に対し、市場は過剰に期待しすぎて、それが株価にも織り込まれていました。
市場はいつも過剰な期待を持つものです。
注目のAI銘柄(エヌビディア)の決算は良かったが、株価が下落するという相反する動きはこのためです。
今回の一番のポイントは、AIのエンドユーザーからの収益化が、期待ほど積み上がっていないのではないかという懸念です。
私個人では、チャットAIの「Claude」、動画生成AIの「NoLang」に定額課金をして毎月5,000円ほど払っていますが、私のような有料ユーザーは法人、個人ともまだそれほど多くないのです。
このようなAIサービスは競争がすごくて、無料でできることが多くなりすぎているので、有料化まで時間がかかるということでしょう。
エヌビディアの決算が良かったのは、AIサービス提供するテック企業の先行投資に対する売上、収益が良かったのであって、AIサービスを提供するテック企業がエンドユーザー向けで儲かっているわけではないのです。
エンドユーザー向けの収益化ができてこないと、半導体供給拡大の持続性が保てないということになります。
投資家は、このような技術革新のスピードと実際の収益化のバランスを慎重に見極める必要があります。
長期的には、AI技術の進化と普及が続く限り、関連企業の成長機会は豊富に存在すると考えられます。
長期的には、AIの未来自体は明るいと私も信じています。
ただ、株式投資に関しては、過剰な期待を持たないように、冷静な目で市場を見つめないといけないと改めて感じます。
今は、一旦AIバブルのような過剰な期待が剥げ落ちつつあるところで、以前より投資しやすい環境にはなってきました。
冷静な目を持って、AIの中でも成長する分野、成長する企業を見極めていきましょう。